公務員から民間へ転職したリアル事例とインタビュー ~成功の鍵と挑戦のプロセス~
「公務員として安定していたけど挑戦したい」「自分のスキルを民間で活かしたい」――そんな思いから転職を決意する公務員が増えています。実際に転職した元公務員によるリアルな事例とインタビューを通じて、転職の動機、苦労、成功の要因、心構えまで、具体的に紐解いていきます。
元地方公務員Aさん(30代前半)/IT系DX推進へ転職
Aさん(女性・29歳)は、市役所で行政職を経験後、IT業界のDX推進企画・提案営業職へ転職しました。前職では障害者福祉・情報システム部門を担当し、折衝力や調整力を発揮していたといいます。
- 動機:部署間の仕事のばらつきや年功序列への疑問。「努力が報われない」実感から、成果が反映される民間へ
- 転職先:IT企業(DX推進企画・提案営業)
- 年収:480万円 → 520万円(年収アップ)
- 転職の決め手:自身のIT領域でのやりがい、面接官との相性、キャリアパスの見通し
- 参考インタビュー:フィノバレー・水巻さんインタビュー
転職後のAさんは、ITツール導入や企業向けDX提案に携わり、行政での実務経験が強みに。民間ならではの成果ベース評価にも満足しているとのことです。
考察
Aさんの事例は、「変化を恐れずに次の環境で力を発揮したい」という意志が際立ちます。特に地方行政におけるIT活用経験が、DX推進の現場でそのまま活かせた点が転職成功の鍵です。
参考にできるポイント
- 行政での情報システム・福祉対応経験を民間のDX支援に変換できる
- 「報われたい」「評価されたい」という感情をポジティブな原動力に転化
- IT系企業でも誠実・論理的な対応力は重視される
元行政職公務員Bさん(32歳)/BPO営業職へ挑戦
Bさんは法政大学出身、9年間行政機関に勤務した後、BPOアウトソーシング会社へ転職。法人営業とオペレーション担当として活躍しています。
- 転職理由:安定だけでは物足りず、「積極的に人生を送りたい」気持ち
- 活動方法:転職エージェント活用・求人応募・書類・面接突破
- 苦労:公務員経験者向け求人が少なく、書類通過率が低かった
- 成功ポイント:志望動機の明確化、自己分析の徹底、人材紹介会社との相性マッチ
- 参考インタビュー:エリートネットワーク 公務員×BPO営業
考察
Bさんのように「安定よりも変化を求める」価値観を持つ人にとって、公務員という環境が合わないことは珍しくありません。行政で培った交渉力や信頼形成力は、営業職でも強みとして通用する好例です。
参考にできるポイント
- 「やりがい」や「人生を前に進めたい」という本音を明確に言語化することが大事
- 書類選考が通りにくいことを前提に、中長期戦略を立てる必要がある
- エージェント選びも成果に直結する
元国家公務員Cさん(30代後半)/兼業写真家へ キャリアチェンジ
Cさんは国家公務員として働いていましたが、28歳で転職活動を開始し、29歳で退職。その後は兼業写真家として活動し、現在はパーソルグループの関連企業への転身も視野に入れながら柔軟な働き方を実現しています。
- 転職理由:「他律的な業務が多く、持続可能な働き方ではない」と感じたこと、趣味の写真活動を続けられない現状への危機感
- 活動時の状況:国家公務員時代の残業は月100時間に達し、体調不良も経験。趣味を続けられず兼業が禁止されていたため、転職を決意(高埜志保さん インタビュー)
- 転職の決め手:フルリモートや兼業制度を重視し、それを許容する企業風土や働き方に注目
- その後のキャリア:一度は兼業写真家として独立し、自身の市場価値を磨いたうえで、パーソルグループの子会社などへの再就職も可能に
考察
この事例は、「価値観に基づく転職」の重要性を示しています。単なるスキルアップや年収増ではなく、自身のライフスタイルやクリエイティビティを保ちながら働ける環境を選んだ点が特徴的です。兼業や働き方の制約に対する「No」の意思表明が、新たなキャリア形成につながっています。
参考にできるポイント
- 自分の人生軸(趣味・ライフスタイル)を守るために転職を選ぶ勇気がキャリアの自由度を高める
- 写真家としての副業でスキル・実績を可視化し、市場価値を高めた点が戦略的
- 多数の選択肢の中で、自身の価値観と制度が合う企業風土を見極めた判断力が重要
元市役所職員Dさん(公務歴23年)/GovTechスタートアップの営業へ
Dさんは23年間市役所に勤務後、行政DX支援企業(GovTech)に営業職として転身しました。住民サービス改善をテーマに活動中です(Bot Expressインタビュー)。
- 転職理由:行政の改善意欲を民間から加速させたかった
- 成果:市町村向け支援案件、DX導入支援に従事
- 心構え:行政視点を強みに変え、顧客理解と信頼獲得が重要
考察
Dさんは、公務員としての長年の経験を土台に、自治体支援側へ回った稀有な存在です。住民視点と行政実務の知見を活かし、「民と官の橋渡し役」として活躍できるのは、公務員経験者ならではの利点です。
参考にできるポイント
- 公共支援スタートアップ(GovTech)は「元行政職」人材に高いニーズがある
- 行政視点からの提案ができる営業職は、競争優位に立てる
- 長期キャリアを経た転職でも、「専門性の棚卸」が成功を左右する
元地方公務員Eさん(40代)/品質管理職へキャリア転換
Eさんは静岡県庁から大手製造業の品質管理職に転職。管理体制の構築や出荷検査に携わり、安定と挑戦の両立を実現しています。
- 動機:品質保証やプロセス管理で実績を出したかった
- 意外な壁:福利厚生や昇給制度の違いに戸惑いも
- 満足点:成果評価が明確で、柔軟な業務改善提案が可能
- 参考談:アシロ インタビュー
考察
Eさんは「手を動かしながら改善していく」ことへの熱意を、民間製造業での品質管理職で実現しました。公務員のマニュアル運用経験が、手順管理・標準化業務に応用できた好例です。
参考にできるポイント
- 公務員の手続業務や監査対応経験は、製造業の品質管理にも通じる
- 福利厚生や昇給制度など、制度面のギャップには事前に理解が必要
- 40代以降でも、自身の希望とスキルがマッチすれば十分に転職は可能
転職成功に共通する3つの要素
① スキルと経験の棚卸 × 学び直し(リスキリング)
公務員経験者にとって最大の強みは、正確性・調整力・公的視点ですが、転職市場では「それをどう民間企業に応用できるか」が問われます。
特に重要なのが「スキルの棚卸」です。業務上で使っていたExcel、文書作成力、対外調整力、制度理解などを具体化し、履歴書・職務経歴書でアピール可能な言語に変換することが第一歩です。
さらに、未経験業界や職種に挑戦する際には、社会人向けオンライン講座や資格講座を活用した「学び直し(リスキリング)」が転職成功率を高めます。たとえばIT・DX分野を志望するなら、RPA、データ分析、基本情報技術者、生成AI活用講座などが実務で歓迎されます。
② 覚悟とマインドセット:安定志向から挑戦志向へ
「安定からの脱却」には不安がつきものです。特に民間企業では、成果主義・スピード・柔軟性が求められる場面が多く、公務員時代とのギャップに戸惑うこともあります。そこで重要なのが、「環境の変化を前向きに楽しめるマインドセット」です。
給与・評価・業務裁量の幅が広がる代わりに、自分の意志でキャリアを切り拓く姿勢が求められます。逆に言えば、公務員時代に感じていた閉塞感やルーティンワークから解放され、「自分で動く」ことでキャリアが拡張していく実感を持てるのも民間転職の魅力です。
③ 専門性ある転職支援パートナーの活用
公務員向け転職市場は、一般的な転職市場とは違う独特のニーズがあります。そのため、「公務員経験者に理解のある転職エージェント・キャリアアドバイザー」の存在が極めて重要です。実際、民間企業側も「行政経験をどう活かせるのか」に不安を持つ場合があり、間に立ってそれを言語化してくれるパートナーは非常に有効です。
また、ハローワークでは網羅しきれない民間企業の中途ポジションや、非公開求人へのアクセスも、転職エージェント経由であれば可能です。
民間転職を目指す公務員へのアドバイス
「いまの仕事にやりがいを感じられない」「もっと成長できる環境に身を置きたい」「成果が評価される世界に飛び込みたい」──そんな気持ちが芽生えたら、転職を検討するタイミングかもしれません。
ただし、安定性が高い公務員からの転職には、事前に知っておきたい心構えと戦略があります。
1. 自分の価値を“公務員用語”から“民間用語”に翻訳する
例:
「地域課題への調整」→「マルチステークホルダーとの交渉・プロジェクト調整」
「条例策定補助」→「制度設計・文書設計能力」
このように言い換えることで、民間人事に刺さる表現になります。
2. 転職活動は在職中から、かつ慎重に
公務員が転職活動を行う際には、副業制限や守秘義務に十分配慮する必要があります。応募企業との連絡は個人端末・個人メールで、業務時間外に行いましょう。また、面接日程は「有給を活用」し、上司や同僚に不要な不信感を与えない工夫も必要です。
3. 「辞めたい」ではなく「成長したい」という軸を持つ
面接では必ず転職理由が問われます。「今の職場がイヤだから」ではなく、「もっとこうしたい」「○○の力を伸ばしたい」など、ポジティブな志向の説明が面接官の印象を左右します。目指す業界・職種でのキャリアビジョンを言語化しましょう。
4. 情報収集は“内側の視点”と“外側の視点”両方から
同じく公務員から民間転職を経験した人のリアルな声はとても参考になります。noteやYouTube、転職サイトのインタビュー記事、OB訪問ツールなどを活用し、現場の温度感を掴みましょう。
転職市場で公務員が活かせる5つの職種
① 管理部門(人事・総務・経理)
条例・規定遵守、文書作成、庶務処理、外部との折衝経験など、公務員経験がそのまま活かせる王道の転職先です。特に「総務×人事」のようにマルチロールを経験した人材は中小企業で高く評価されます。
② コンサルタント(行政・公共政策系)
省庁・自治体出身者は、公共政策コンサルや社会課題解決型ファーム(GovTech・社会起業系)で重宝されます。予算配分、委託管理、制度企画経験は民間企業でも強いニーズがあります。
③ IT・DX推進(システム導入・RPA・データ整備)
公務員が苦手とすると思われがちなIT領域でも、システムベンダーとの調整やBPR経験がある場合、導入支援・プロジェクトマネージャーなどで活躍できます。生成AIやクラウド活用を視野に入れた学習意欲が重要です。
④ 営業職(官公庁向け法人営業/BtoB営業)
官公庁向けのBtoG営業においては、公務員出身者の「構造理解力」「制度知識」「信頼性」は大きな武器になります。公的調達の理解を活かして、営業企画やアカウントマネジメントに進む方もいます。
⑤ 品質管理・内部監査・コンプライアンス職
監査・マニュアル運用・業務標準化などの経験は、製造業や金融業界の品質管理部門で特に高評価。行政監査や内部統制業務をしていた方は、内部監査職などへの転職も検討可能です。
まとめ:公務員から民間へ――キャリアの再設計は可能
本記事で紹介した5名の事例に共通するのは、「強みを再認識し、民間で活かせる形に再構築した」ことです。安定と引き換えにキャリアの自由度や成果評価を得る挑戦ですが、公務員の経験は民間で通用する価値があります。
転職は不安も伴いますが、「成長の選択」として踏み出すことで、自らのキャリア軸を描き直すことができます。あなたの公務員経験は、公的信頼の証でもあり、民間での可能性を広げる力になります。